平成15年2月2日 石峠付近最大ピーク(推定600m)
雪山トレッキング、兼、狩猟、単独
今日は,朝から悩んでいた。
スキー場に行き,自分の子供を教えるか,ウサギ狩りに行くか。
天気予報は,明日から雪が混じると言っている。
明後日からは,又出張だ。
幸いに,自分の子供のスキーレベルは格段に上がってきており,
プルークで下まで滑って来れる位の技術にはなっている。
友人のイントラ仲間に電話し、今日は行けないと一報する。
足の悪い妻に握り飯を作ってもらい,そそくさと支度をする。
岩手と,埼玉の心の友から贈って頂いた、ガーバーーのナイフをしっかりとザックに入れる。
今日は,一応山歩きも兼ねているので,デジカメも準備する。
ハードな山歩きはいつ以来であろうか,記憶にすらない。
家を,8時少し前に出て,石峠トンネルを過ぎた地点には,8時半頃着く。
カンジキを付け,8時45分頃出発となる。
石峠の旧道の上を見ると,ウサギの足跡らしき跡がある。
旧道を眺めながら,尾根筋を登っていくが,尾根は痩せてきたので,杉林の方へとトラバース気味に登って行く。
ところが,それがミスだった。
普通に尾根筋を登って行けば良いものを、トラバースした為にウサギに感づかれ,姿は確認できたが,
時既に遅しで,逃げられてしまった。
そこから、トラバースして,目的の始発点に行こうと思ったが,雪が少なく状況はあまり良くない。
仕方ないので、最初の地点に戻り、出発点を目指す事にした。
昨日、一昨日と、雪が続き、かなりの降雪が有り、カンジキ歩きは大変なものと予想されたが、膝上程度であった。
しかし、一歩進むのに数秒の時間が掛かり、ラッセル単独という条件なので、極めてゆっくりのペーズで移動する。
足跡といえば、テンくらいしかなく,ウサギなんかこの世に居るんだろうかと思う程確認できない。
車を出発してから、約3時間、ようやく尾根筋に到着した。
未だ、この尾根筋は、この地域の最高ピークではないらしく,未だ上へと稜線は延びている。
稜線歩きをしていると、久々のウサギの足跡が確認できた。
どうも、この尾根筋の斜面に居るような気がした。
正午を過ぎていたので、握り飯を食うことにした。
握り飯を平らげ、カモシカウオッチングを楽しみ,出発した。
先程のウサギの足跡が、どうも気になっていた。
何故か、この下のブッシュに潜んでいるようだが・と思い、,雪をかけてみる。
右前方に,白い,動くものが走る。
反射的に射撃し,難なく一発目で捕獲。
冬山の猟の初山での,幸先の良いスタートである。
肋骨から恥骨に掛けて,軽く毛を毟り,例のガーバーのナイフで腹を裂く。
必殺仕置き人・・・という、俗時代劇があったが,そこで登場する仕置き人の中で,
かみそりの使い手が居たような気がする。
前置きが長くなったが,要は,かみそりの如くの切れ味であった。
やや、体が冷えていたので,ウサギの内臓の温度で手を暖める。
獣は,得てして,寸切れる時に尿や糞をする。
当地では,これを「切な糞」、「切なションベン」という。
医学的な見地から見れば,即死における,筋肉の突然の弛緩によるものと言えるのだろうか?
今季初のウサギである。
ウサギ一匹,いくらだい?。そんな,会話が冬の間,交わされることもある。
雪山や,ウサギ狩りをしたことの無い人がよく言う台詞だ。
はっき言って、売る事なんてできない。
それほどの,価値がある。
新聞やニュースを賑わせて,マスコミを儲けさせている,食肉問題、そんなものとは100%無縁な食肉だからだ。
内蔵の処理を済ませ,又,出発する。
栃尾市の道院に行く道であろうか,スノーモービルが爆音を立てながら雪道を爆走している。
現在地の左手の斜面には,若いニホンカモシカが,前足で雪をほじくっているのが見える。
常緑のシダ類や,樹木の葉っぱを求めてほじくっているのだろう。
若いのだろう、毛の色がかなり白い。
ニホンカモシカの居る斜面のやや下方に,尾根筋に向かってウサギの足跡が点々と伸びているのを確認する。
ぐるりと捲いて行こうと思ったが,獲物も取り合えず,1羽獲れた事だし,真っ直ぐ行く事にした。
大きな杉林に向かって,今度は下る事になる。
足跡は,かなり多くなり,ウサギの気配が感じられる。
案の定,杉と杉の間をウサギがササッと横切るのを確認。
この辺には、2〜3羽居た模様で,新しい逃げ跡が有った。
数人で捲けば、何羽か獲れたであろうが、「たら・・れば・・」は意味がない。
逃げたウサギを深追いしていると,時間が無いので,早々に諦め、この辺で一番高いピークを目指す事にする。
今年は例年になく雪が少ないので,尾根筋では木の袂には特に注意が必要である。
この辺で一番高いピークの上に立ち,景色を眺める。
このピークは,須原スキー場の頂上付近とほぼ同じ高さと思われ,すなわち,標高にして600くらいではないかと思う。
南には,越後三山が見え,荒沢岳,権現堂山,檜岳,百字ヶ岳.太郎助山,村杉半島,浅草岳と一望でき、
なんといっても,守門岳がワイドで圧力のある姿を披露していた。
大白川側から見る,三つ瘤の守門岳はお目にかかれないが,青雲岳から大岳、
中津又岳の雪の曲線は見るものを圧倒する。
午後1時を回ったので,引き返すことにした。
雪が浅ければ,これからさらに下に下り,別の猟場を歩く所なのだが,今日のこの深雪の悪条件では,
石峠付近まで下って,後は車の所に戻るしかないだろうと諦める。
尾根筋は,栃尾側から,守門村方向に風が吹き,雪庇を形成しつつ有り、その頂部は自ずと雪が深くなる。
しかし、その深雪部を外れるとヘツリ風に歩かなければならず,ゆっくり歩き頑張る事にした。
途中で,記念写真を撮ろうと,木の叉を探し,そこに雪を詰め込み,デジカメを置いた。
そこそこまともに撮れていた。
しばらく行くと,ナラの木が有り、小さな瘤状のものが沢山付いていた。
何かの本で読んだが,これは木の「癌」なのだそうだ。
自然は,着々と蝕まれているのかも知れぬ・・と改めて思った。
それにしてもこの辺は全くウサギの足跡というものが皆無だ。
キラキラ光る真っ白な雪の尾根を歩いていると,何も聞こえず,全く静かだ。
聞こえるのは,息を切らす自分の吐息だけだ。
もうすぐ,石峠に着きそうな位置まで下った。
横を見ると、ニホンカモシカの成獣がじっとこちらを見ている。
声を掛けるが,ぴくりとも動かず,石のように固まりさらに俺を凝視している。
邪悪な発想が頭に浮かんだが,振り払う。
ここが本来の石峠のピークで有り、でかい送電線の鉄塔がある。
昨年は,ここでウサギを逃がした苦い経験がある。
拠って,ゆっくりと雑木の中を下り始め,とっさのウサギの動きに対応しようと銃を腰だめにしながら
斜面を下り始める。
しかし、昨年同様の所にウサギがわざわざ俺を待っている訳がないのだ。
しばらく歩くとウサギの足跡があっちに行ったりこっちに行ったりしている足跡に遭遇。
「よもや・・・」と思い、慎重に銃を構え寄って行く。
案の定,キハダの小木の袂からウサギが飛び出した。
上手く溜まっていなかったが,BBだったので,丁度良くばらついてくれたようだ。
相変わらず,ガーバーのナイフの切れ味は最高である。
ここまで来れば大丈夫と、残りの握り飯に手をつける。
石峠の旧国道沿いにゆっくり下る事にした。
足も攣り気味になり,足も上がらなくなった頃,ようやく石峠新トンネルの入り口に着いた。
車始発点8:45 名前不明ピーク13:00 石峠14:30 車15:30