4月23日 左沢〜大三本沢源流部
名峰、浅草岳から流れ出る沢には大きく分けると、ムジナ沢、白崩沢、左沢、大三本沢、小三本沢がある。
ポピュラーな沢としては、ムジナ沢とか白崩沢があげられる。
この日のシシ山は、左沢ということで、木の根沢や大三本沢まで見て回るというコースであった。
ホテル大自然館前から、少し行った所で、雪が道路に残っており、そこに車をそれぞれ停車させる。
20分ほどの車道歩きとなる。
やがて、田代平に向かうゲート入り口まで来ると、左沢方面へと入っていく。
左沢と右沢が合流する地点に橋が掛かっており、その橋を渡って右の平らな尾根に入ってゆく。
聞けば、この古道は、昔の八十里道の名残りだといわれる。
左沢と破間川の間は、だだっ広い地形となっているが、一応は「中曽根」と呼ばれているらしい。
中曽根の平らな部分には、スギの植林が施されている。
うっかり、1人で踏み入れば、方向を見失ってしまうかもしれない。
中曽根をしばらく歩くと、黒姫の山並みが見渡せる場所に到着し、それぞれが双眼鏡で見始める。
休憩をしながら、各自が話をしている。
尾根が少し、細くなってくると、幾人かの小隊に分割され、我々は4名のグループとなり、左沢の湿原に入っていく。
この、左沢の大湿原は、実は自分にとっては始めてであった。
お客様から、地図を見せてもらい、この湿原のことを何度か聞かれることはあっても、実際には行ったことがなかった。
噂では、湿原とは名ばかりで、かなりの木々があるとは聞いていた。行ってみると、確かにだだっ広い地形では有るが、湿原らしき感じではない。
雪がかなり残って入るが、少なくとも田代平のような地形とは比較にならない。
しかし、それにしても広い。
広い、多少の植林されている杉の木の間を歩きながら進んで行くと、前方に二つの沢が見える。
沢の左方面を登って行く。
「下のみちぎ」と呼ばれる所だそうだ。
下のみちぎから、一気に標高差をかせぎ、遠く守門岳から烏帽子山、鞍掛峠、田代山、左沢ガッチの稜線に取っ付く。
我々が取っ付いた付近は、左沢の大曽根と呼ばれているらしい。
田代山と福島県側のカッチから、木の根沢が流れ、我々の居る近辺からオソ沢が流れ出し、大三本沢、小三本沢と合流し、入叶津へ流れ出ているのだろう。
この日、私はオヤジと同グループになった。
私とオヤジの他には、勢子専門のNさんとHさんである。
第1グループは、田代平の田代山のやや木の根よりの高い位置に場所を設定して、眺めているようだ。
時々、連絡が入るが、「その気配」はない模様だ。
第1グループは、そのまま観察を続けるという連絡が入り、我々4名は少し間隔を置きながら、大三本沢源流部へと至ることになった。
我々が観察をしていた地形から、徐々に左沢カッチ方面に向かって行くと、尾根は平になり、沢筋の地形が直ぐ判断できにくいので、離れての行動となった。
私は、初めての場所なので、勢子のNさんと同行することになった。
大三本沢の源流部は、沢が深くてシシを追い詰めるには大変有利であるので、Nさん曰く、「ここなら、この人数でもシシは獲れる」と変哲もなく言い放つ。
対岸の斜面は、大部ブッシュが付いているが、すぐ傍なので、用心して行動する。
はやりここでも、シシの気配はなかった。
午後3時30分を過ぎて居たので、そろそろ下山準備、という連絡が入り、私とNさんは左沢の源流部の沢筋を下ることになった。
左沢源流部のブナ林は見事な原生林で、しばし、目を奪われた。
大三本沢まで至らなかったオヤジと、Hさんは既に私たちより先に沢の中間部分で一服をしていた。
元来た道をピストンするのは、長丁場となるので、ネズモチ平に一旦出てから車道沿いに帰ろうと言うことになった。
ネズモチ平らの入り口付近に着いたのは、既に午後5時を回っていた。
今日も空振りでは有ったが、長い道のりを歩き、私には多少の充実感があった。