10月1日 沼の平経由浅草岳  沼の平付近八十里越え古道探索

 朝、出掛けるのが遅くなってしまったが、沼の平付近の探索をしようと出掛けた。
浅草岳入叶津口に車を止め、歩き始める。
砂防ダムのある沢を越え、ワラビが繁茂する緩登を進む。
登山道にはキンミズヒキ・ノブキ・ノコンギクなどが見られる。
湿り気のある道を越えると、広い古道の名残の九十九折の道となる。
この辺まで来ると眼下に、国道工事中の289号線が見えてくる。
炭焼き跡を過ぎた所に大きな栃の木がある。
そこを過ぎると、日当たりが良い場所となり、春先はエンゴサクやサンカヨウのお花畑となる場所だ。
 登山口から40分強で、山神杉に着いた。
休憩場所には最適な場所で、ブナの原生林が傍にあり、ロケーションは最高である。
アオハダの実が赤く染まっている。
ここから下ると沼の平に行くのだが、夏の水害の影響で決壊している部分があるとの注意書きが有る。
歩かぬよう・・と、少し柔らかく歩行禁止を促している。
幽玄なブナの原生林を眺めながら小三本沢に降りて行く。



沢の取り付きのあたりは、水で流されている模様だが、対岸に赤テープが捲かれ、進路は明確である。
水も大した事は無い。
ただ、随分と沢が崩壊し、見るも無残な感じではある。
対岸に渡って直ぐの所も決壊しており、近くに数メートル捲き道が施されていた。
後はいつもの沼の平の山道であり、特に問題はなかった。
この山道も、年々移動しているようで、山道には段差と亀裂が入っている。
7~8分歩くと小沢があり、渡って直ぐの所に沼が現れた。



沼を過ぎると山道の端に「古道」と書かれた小さな角柱があった。
道型は問題なく有るが、虎ロープが張られてある。
果して道は有るのか?歩き出して直ぐの所に、既にブナの大木が倒れており、山道の進路を塞いでいる。
やはり駄目なのであろうか?そこをすり抜けると、意外に道は明瞭である。
明瞭どころか赤テープが所々捲かれてあり、くねくねと曲がっているがさほど難しくはない。
 20分ほど歩くと沼から流出しているらしい沢状の渡渉があった。
そこを過ぎると、粘土状の泥濘があり、開けた場所へと進んで行く。
歩き始めて25分位であろうか、忽然と道型は消えた。
鉈目は途中まで有り、赤テープも有ったのだが、いきなり消えた。
何かの測量でここまで分け入ったのか?色々考えたが、考えた所で道が現れる訳ではない。
しばらく道型を探してみたが、結局解らないので、少し戻ってみる事にした。
粘土質の泥濘から、右に分け入っている道型のようなものを発見した。
スパイク付き長靴の踏み跡も明瞭に解った。
そこを入って行くと、沼状の小沢が有り、大きなブナの倒木が沼に横たわっていた。
所々赤テープは結んであるが、いずれにしても判りづらい所ではある。
ブナの大木沼で道は不明となったが、大木を渡ると再び赤テープが現れた。
以降、じめじめした水気の多い粘土質の雑木のあるヒドを縫い、赤テープに沿って登って行く。
一気に急登となり、いきなり峠らしき所に着いた。



この尾根の道は、いかにも古道らしい感じで、ほぼ間違いないと思う。
「只見」2万5千図では曲沼北の、846ピークから南西に伸びる稜線であると思う。
眺めの良いところから見ると、眼下にはいくつかの沼が点在し、猿崖も見える。
しかし、濁り沼は見えない。



尾根筋にはハイイヌツゲが生い茂っているが、道型は明瞭となっている。
しかし、再び道型は忽然と無くなってしまった。
踏み跡の主の新しい鉈目が見られたが、以降枝一本足りとも踏み入った気配は無い。
道型は無いものの、ブナの極相であるため歩きにくい事はない。
沼が見える地点の木には、彫りこみさえも見られ、確実に人は以前から入り込んでいる地域ではあるようだ。
木の彫りこみもその証拠であるし、朽ち掛けたヘルメットも落ちていた。
ブナの老木の根元には、大きなキノコの腐った残骸が見られた。
 古道は「八十里越え新旧路線および遺構」の図面によると、この崖尾根からやや北寄りの西方向に854m平地があり、
その下を古道は通っているようである。
前での図面によると、その地区に石積み排水路や、石垣跡と書かれてあり、それらの痕跡があれば、
再び古道に乗る事は可能なのかも知れない。
また、その先のコースに於いても、「八十里越え・・・」図面によれば、大三本沢を渡渉後、はしご坂なる、
極めて図面上では明瞭な九十九折が記載されている。
しかし、そこを越えたとしても、木の根峠までの間は、特長的な地形も無く、かなり難しいのではないかと思った。

 しばらく徘徊してみたが、全くそれらしい気配も無いので、引き返す事にした。
複数で、ああでもないこうでもないと、論じ合うのも藪山ならではの楽しみであろうが、単独では不安感で押しつぶされそうになる。
自分でも、特に解りずらい箇所に印を付けていたので、帰りは多少間違えたものの難なく戻れた。
 さて、これから戻って会津蒲生岳でも登って帰ろうか、如何しようかと思いを巡らせたが、
取り合えず周遊し平石山を経由して帰ろうと歩を進めた。
小三本沢の沢の音が聞こえる地点で、山道の崩壊があった。
しかし、捲き道の鉈目が入っており、危険度は感じられない。
小三本沢を渡ると、怒涛の登りが有るのだが、それを考えると少し億劫になってきた。
ここ数年、来ていなかったが、階段状に丸太が施工されてあった。
急登ゆえ、さすがに休みを入れないときつい。
眼下には、濁り沼やその他の沼達も見える。小三本沢からおよそ40分強でようやくブナ平新道分岐に着いた。
休みながら、これから如何したものかと考えたが、この先浅草岳に当分行けそうのなく、向かってみようと思い立った。
せめて、避難小屋付近の草紅葉でも見てこようと思ったからである。
だらだら歩きが嫌になる頃、ようやく道は右に進路をとり避難小屋へ向かい始めた。
避難小屋付近はヌマガヤの草紅葉に一面覆われ、そこにイワイチョウの葉っぱもあり、西日に照らされて美しい。



ザックと帽子を放り投げ、空身で山頂に向かう。
大した荷物も背負っていない筈なのだが、背中に何も無いだけでも随分と軽く感じる。
避難小屋からは20分ほどで山頂に着いた。
山頂からは鬼が面山山塊、毛猛山塊、越後三山がそれぞれ西日に照らされ、三枚屏風のように並んでいる。
前岳付近も逆光となり、紅葉の進み具合は今一つよく解らない。
しかし、依然少し早いようでもある。
祠に手を合わせ、大至急下りはじめた。
平石山まで1時間、さらに山神杉近くなってくると、完全に日没し、最後のワラビの生い茂った山道では何回も転んでしまった。
そそくさと履物をサンダルに替え、登山口をあとにした。
入叶津部落には、それぞれに灯りがともり、稲藁の匂いと夕飯の匂いが郷愁を誘った。

入叶津登山口9:25 山神の杉9:57 小三本沢10:22 一つ目の沼10:33 古道入り口10:35
沼状の小沢11:17 沼11:25 峠尾根11:45 12:00発 古道入り口13:15 沼13:30 小三本沢13:40
ブナ新道上部分岐14:25 スダレ上14:35 避難小屋15:20 浅草岳山頂15:40 浅草岳山頂15:50
避難小屋16:05 ブナ新道上部分岐16:50 平石山17:10 沼の平入り口分岐17:35 入叶津登山口18:05

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