3月20日 黒姫
山仲間が昨日当宿に宿泊し、本日黒姫に一緒に登る事になっていた。
自分も含め、総勢8名であり、それぞれが山のベテランでもある。
黒姫には、天気も悪くないので登る人が結構居ると思われたが、我々の他には見当たらなかった。
テレマーカーのMさんを除き、ほぼ足回りは壷足、及びカンジキである。
ずっと、雪は殆ど降らない日が続いていたのだが、18日にうっすらと積もった。
しかし、昨晩も冷え込んでいたので、ぬかる事はまずないだろうと思っていた。
案の定、壷足でも全く問題なかった。
昨年は、登る数日前に新雪がかなり降り、ラッセルを強いられたが、今日はことのほか楽である。
林道終点(タモ平)には、25分で着いてしまった。
下黒姫沢は、昨年と較べると、雪は多いようである。
右岸、左岸からそれぞれに表層雪崩の痕跡が見られ、そこの部分だけが隆起している。
沢も、例年に較べれば雪は少ない方だが、近年の小雪傾向から考えれば多いほうであろう。
従って、沢の「開き」は一箇所に留まっている。
無雪期の時期には、岩場となっている左岸には、のっぺりと険悪になっているものの、
ワンブロック毎に分離されておらず、落下してこないと見る。
沢の源流部近くになると、奇妙な雪の塊の地形に出くわす。
沢筋に沿い、数10mの雪塊擁壁が自然に構築されている。
しばらく行くと、その謎が解けた。
右岸尾根(上部1,000㍍)から繰り出した雪崩が、うねうねと流れ出て沢筋を押してきたものであった。
雪崩が走った後は、大きな流路工のような地形となっていた。
ここで、大休止をとることにした。
この辺は、雪の多い年には、エラオトシ沢と、この下黒姫沢に挟まれた標高1200m尾根から雪崩が起こり、
大デブリが形成されることがある
ここ数年は、雪も少なく殆ど見られない。
休憩後、沢を離れ、上黒姫沢方向の尾根に向かい進路をとる。
ここからいよいよ登りの始まりとなる。
今までの鼻歌気分は一転、荒い吐息がブナの樹林に混じる。
下段に到着し、全員が来るのを待つ。
呼吸を整え、中段の雪の砂漠に向かい一気登りを始める。
中段には、9時15分に到着した。
中段から見ると、黒姫から駒の神の稜線まではすぐ傍に見える。
しかし、以外にこれがきついのだ。
地形がだだっ広く、横へ横へとヘツリながら行くので、知らないうちに息があがってくるのである。
稜線への最後の登りでも、回りの地形が広く感じられるので、ついついオーバーペースとなってしまうのが常である。
出発後、3時間20分で稜線へ着いた。
南の山々の景色は今1つであったが、今日は北方面が見事に見える。
飯豊は勿論、佐渡、弥彦など、実に素晴らしい。
一堂、見事な景色と対面し、しばし、歩を停め写真などを撮る。
これから尾根歩きで、一気に黒姫山頂の向けて歩き出す。
3月10日前後の大雪で、危険なクレバスはほぼ皆無であったが、雪が多いのと風の為か、
今までに無いナイフエッヂ状の稜線となっていた。
足回りをきちんとし、慎重に通過した。
稜線取っ付きから約40分、山頂に到着した。
トータル4時間強であった。
昨年に較べると、何と1時間20分の短縮である。
雪の条件でこうも変わるものだと、つくづく思う。
それぞれが、思い思いの構図を記録に収め、全体写真を撮っていただいた。
山頂は思ったより風は無かったが、やはり寒く感じ、中段近い所で昼食にする事にした。
この日、私達の後に、山スキーヤーが2名登ってきており、尾根途中で行き会い、挨拶を交わす。
稜線から一気に急登を下り、昼食広場に到着した。
皆、この時を心待ちにしていたのか、ザックから最初に出てくるのは、癒しの液体である。
大雲沢ヒュッテ特製のおにぎりを肴に、耳をくすぐられるような近辺の山々の賛辞に、心なし酒量も増える。
確かにこれだけ条件の良い黒姫は滅多に無く、眺望も文句なし・・・。
既に達成感さえ感じてしまう。
風が冷たく感じられる頃、それぞれの店を畳み下山を再度開始する。
曇り空といっても、朝方と違い雪は緩んできており、私は先にカンジキをつけることにした。
テレマーカーのMさんは、テレマークの基礎を学んできたということであったが、相当悩んでいるようでもあった。
勿論それは下手で悩むというものではなく、単に基本を守り抜こうとした決意のようなものが感じられる。
急にMさんと、シュプール競演をしたい心境に駆られた。
中段下の急登を下ると、緑色の大人数用パーティー用のテントが幕営されていた。
ちらりと視線を合わせると、若い女性らしい人も居たようだ。
これから、宴会モードに入り、明日、山頂を目指すのであろう。
沢に入り、大分ぬかるようになってきたようで、皆カンジキを付け始めた。
沢をあとにし、背後の黒姫を見ると、青空に覆われ、見事な姿を披露している。
黒姫自体も良い山であるが、その左手の稜線斜面の何も無い無垢さに誰もが心奪われるのである。
私自身、黒姫には8回行っているが、今日ほど色んな面で条件が良い日は始めてであった。
車道に着き、挨拶を交わし、それぞれの帰路に着いた。
黒姫に想いを馳せ、我が宿に来て頂いた方々に、良い山旅を提供できた事を喜び感謝したい。
黒姫橋(h470)6:50 造林地終点(h570)7:15 沢終点(h680)8:00
中段(h1040)9:15 稜線(h1270)10:12 黒姫山頂(h1367.8)10:55
黒姫山頂11:05 昼食地点H1110付近)11:40 発12:40
沢13:15 造林地終点13:50 出発地点14:15