3月21日 エラオトシ沢左岸尾根

 小さな仕事が入っていたのだが、はっきりした事が解らず待機していた。
9時過ぎにようやく連絡が入り、無しになった。
昨日の黒姫から一晩しか経っておらず、あまり山に行きたい心境ではない。
しかし、その気持を払拭するような赤天気だ。
どう考えても、極めて忙しい用はない。
たぶん不在であろうと、駄目元で地元の山仲間に電話を入れてみた。
すると、なんとH氏は在宅していた。
とりあえず、飯の用意だけしてくるよう連絡し、H氏が来るのを待った。
 昨年、3月、ジャクズリガッチにお客様と歩いたが、その上の三角点まで至りたかった。
その旨を伝え、シロも伴い福田石砕の工場から出発した。
午前10時を回っていたので、大分雪は緩んでいたが、しばらくはカンジキは不要であった。
急登の所からカンジキを着けた。
越後三山縦走日帰り15時間の体力を誇るH氏には、最初から付いて行く積もりはない。
大体のコースを説明し、先を行ってくれと促す。
今日の雪質は、カンジキを付けるには硬く、壷足ではぬかるといった、実に中途半端なものであった。
800m地点までは一気に標高差を350mほど稼ぐ事になる。
即ち急登であり、カンジキではグリップが利かず、滑りやすい。
800m付近になると里山から深山といった雰囲気となり、徐々にブナの大木が目立ち始める。
尾根はすっきりと道がついているようにジャクズリガッチまで延びている。
H氏は相変わらずどんどん飛ばし、もうカッチに到着したようだ。
私は山頂近くで少し息が上がり、足を停め一呼吸置いて山頂に到着した。
昨日の黒姫同様に、今年は昨年に較べると雪の量は多いと感じる。
福田石砕を10時10分に出発し、ここジャクズリガッチにちょうど2時間で到着した。
正午を回っていたので、昼食とする。
シロにドッグフードを与える。
この間の行方不明事件から、シロは今日は従順で、一定の距離を保ち、あまり離れない。
昼食を摂り終え、三角点の有る、1177.2m付近まで行こうということになった。
少し下り、ジャクズリ沢の源頭部を通過し、再び登り返しとなる。
ブナは原生林の立派なものが多く、被写体としては抜群であった。
しかし、デジカメの電池が切れてしまい、肝心な映像を提供できないのが悔やまれる。
登り返しを登ると、1099mのピークとなるが、真っ白いだだっ広い大地が現われた。
直径が500mも有ろうかと思うほどの広い平原があった。
数10年前に、ここのブナが伐採されたという話を聞いたことがあったが、それがそうなのであろうかとH氏と話した。
この広い大地の外れには、昨日の黒姫山行で最初の休憩をとった造林地終点に延びている
タモ沢の源流部であろう地形があった。
そこを通り過ぎ、再び少し下り、急な登り返しの壁が有った。
H氏は、機械的な速さで無機質に斜面を登って行く。
私は焦らず、ゆっくりマイペースで登る。
やがて、昨日の下黒姫沢から眺めた、険悪な尾根の頭に取り付いた。
ここからの黒姫は雄大で、右に黒姫1367.8m。
中央に1328m、左に駒の神1425mの巨大な壁が佇み、その下方に雄大な雪原を従え、
さらに下と上の黒姫沢をはべらせている。
しばらくH氏と山の同定会や、地形の同定を行う。
もう少し先まで行くか、それとも、黒姫沢を下ろうかと相談する。
しかし、食い物をあまり持参していなく、不安があったので引き返すことにした。
刃物で抉ったような鋭角的な雪庇の急斜面を、シロはカモシカの匂いを感じとり下り始めた。
帰るぞ!!と、一閃、シロは何か今日は従順で、すぐ踵を返してきた。
 帰りは、H氏を色々自然の話をしたりしながら、ゆっくりと下った。
名も無い山に登った、しかしそこは想像以上の景色が存在した。
登り3時間下り2時間であった。

トップへ
山塊別山行き記録へ戻る
2004年山歩き