6月21日 六十里から浅草岳ピストン
台風前の暑い天気予報の中、8時45分の遅いスタートで六十里越え登山口を出発。
登山口には四駆の車が二台停車してあった。
今日は、コースの状況確認と看板の文字筆記や、邪魔な樹の除去が目的である。
登山口から県境近くまでは、割と平坦な道のりを歩く。
雪によって、根元が折れ曲がっているブナの樹を携帯鋸で切る。
道端には、ミズタビラコやミゾホウズキが小さな花をそれぞれ付けている。
県境から左に折れ、マイクロ中継局までの登りは、もっとも厭な登りだ。
単調な登りのため、ついついペースをあげてしまい、必ずといっていい程ばてるパターンを繰り返す昨今だ。
今日に至っても、それをやってしまった。
天気予報どうり、暑さと湿度は半端ではない。
あまり暑い・・・とは感じないが、とにかく汗が出る。湿度のせいなのであろう。
何とか1時間を切る事は出来たが、かろうじてである。
マイクロ中継局は昨年まで、もう一棟古い建物が有ったのだが、昨年の工事で取り壊されている。
取り壊された広場には、ブナの稚樹が植林されていた。
最近は、何処の土木工事の現場跡にも色んな木々が植林され、環境を元に戻すべく対策が行われているようである。
マイクロ中継局から、鬼が面山分岐にかけてのだらだらした山道は相変わらず少し厭になる。
昨年は、6月23日に来ているのだが、ここら辺の状況はほぼ同じ感じだ。
南岳にかけての樹林帯のだらだら登山道には、いくつかの倒木気味の木が登山道を塞いでいた。
ごく太い物はそのままにし、携帯鋸で切れるものは、切った。
途中の凹んだ地形では、いつもの事ながら、サンカヨウの花が咲いており、また食べれそうなコシアブラも有った。
その他、話題にものぼりそうも無い、地味なタニギキョウ・コミヤマカタバミ・サワハコベなどの植物が見られた。
南岳に着くと、一閃、涼風が押し寄せてきた。
稜線の風はもとより、かなり台風が近づいてきたようだ。
登山道脇には、ゴゼンタチバナやアカモノが沢山有った。
ヒメサユリもかなり開花していたものに会う事が出来た。
やはり主力はヒメサユリであった。
ベニサラサドウダンは散り始めているようであったが、ウラジロヨウラクはヒメサユリとほぼ同じ花期であろうか、結構沢山見られた。
鬼が面山の山頂目掛けて視線を辿っていくと、2人の登山者が山頂を目指していた。
自分も鬼が面山山頂に着き、ご夫婦に挨拶した。
台風が来るので、ここで昼食を摂り、引き返すとのことであった。
遠く浅草岳を見れば、まだまだ遠く後2時間近くは掛かりそうである。
自分も帰ろうと思ったが、もう少し先まで行ってみることにした。
ご夫婦に挨拶し、歩き始めた。
過去の浅草岳紀行文にも何度か書いた記憶がるのだが、.この鬼が面山から浅草岳までの間に、私の好きな空間が有るのである。
それは、標高が低いながらもれっきとした高山植物があり、岩壁のシャープな輪郭が好きだからである。
ここに来ると、浅草岳に登っているという感覚はなく、異質の山に居る感じがするのである。
浅草岳の一般登山道にはない、コケモモ・ウスユキソウ・ハナゼキショウ・ミヤマダイコンソウ・ツガザクラ・グンナイフウロなどに会うと、ヒメサユリ以上に気持ちは昂ぶる。
引き返そうかどうしようか考えているうちに、前岳近くまで来た。
ここまで来たのなら山頂まで行って願でも掛けて来ようと行く事にした。
ネズモチジャンクションには、ご夫婦が休んでいた。
挨拶を交わし、山頂に向かった。
山頂直下の草原内には、ちらほらとヒメサユリの開花したものもあった。
昨年に較べると、1週間〜10日ほど開花は遅れているようである・・・が、ここの所の暑い日により一気に開花が進んでいるようでもある。
木道脇にツマトリソウが純白の花びらを鼓舞し、池糖付近ではワタスゲが群生しあっていた。
ここ数年来の草原保護により、ワタスゲも大分安定しているようでもある。
山頂には、ジャスト4時間で到着した。
帰りの時間もあるので、あまりゆっくりせず、すぐ下山を開始した。
中年以降になると、六十里越からの浅草岳ピストンはかなり体力を要するのである。
展望良ければ、楽なコースから登り、六十里越登山口に下山するというパターンも推奨ものである。
台風のせいか、鳥の声もあまり聞こえなかったが、クロジ・メジロ・コルリなどが聞こえた。
帰路中は台風の突風が稜線を吹き荒れ、何度となくよろけた。
稜線を外れてからも、ブナの樹冠がゆさゆさと揺れ、風が木の葉とこすれ合う轟音だけが山に響いた。
ps:南岳と鬼が面山間の稜線中、一箇所山道が雪庇崩壊の為欠落している箇所があり、そこは特要注意である。