8月19日 浅草岳

 昨日、常連のお客様が来て、夜遅くまで一緒に飲んだ。
明けて、今日はゆっくりする予定だったが、台風の来訪が多少遅いのか、晴れる模様である。
急遽、浅草岳に行くということになり、私も一緒に行くことにした。
 遠くまでくっきりと山々が見え、山好きならじっとしては居られない爽快な空模様である。
桜曽根まで行くのであるが、途中の林道では、ジャコウソウ・ミヤマシシウド・シラネセンキュウ・などの初秋の花々が咲いている。
シシウドは大木化しているので、林道に覆いかぶさるように花を付けている。
沢の部分には、トリカブトの花が見られるのだが、時期的に、未だ早いようである。
 桜曽根からは、刈羽黒姫や米山、妙高方面もくっきりと見える。
また、飯豊の一角や御神楽岳など、かなり眺望はよい。
登りはじめると、やはり台風前のフェーン現象で、ことのほか暑い。
しかし、時折吹く風が、頬に当たり、その涼風で一気に疲れが吹き飛ぶ。
夏の中級山岳は嫌われるのが常であるが、こういった涼風を体験すると、これもまた良し・・となる。
 林床を見ると、タケシマランなどが実を付けているが、ゴゼンタチバナは未だ結実していないようである。
木本類では、ムシカリが赤い実を付けている。

嘉平与のボッチの前衛ピークに着くと、四方の山々が見渡され、皆がそれぞれに感嘆する。
特に印象的だったのは、いつもなら周りの山々に隠れて地味な存在の未丈ヶ岳が、くっきりと自己主張していたことである。
普段は荒沢岳の前に位置している為、眺望が良くないとあまり目だない山だからである。
 花は僅少ではあるが、斜面側には、シモツケソウ、オタカラコウ、カラマツソウ、ミヤマシシウド、マルバダケブキ、などもあったようだ。
登山道には、イブキゼリや、ミヤマママコナが目立つ。
今の時期特有のヌマガヤ系統の出穂が美しい。
多くの花好きの登山者は、いわゆる「花」に魅せられるのが常だが、こういったイネ科の植物の出穂は秋らしい風情があって美しいと感じる。
花はなくとも、色んな場所場所に、感動や美は存在すると思う。
山々に掛かるガスの動き、シャープな雲たち、哀愁を湛える赤とんぼの群れ、これからの・・・紅葉etc、etc。

前岳直下の遅くまで雪の残る場所では、植物はきわめて少なく、芝生のようになっている。
そこに、所々イブキゼリが産毛のような花を付け、短い夏を楽しんでいるように見える。
木道の周りには、チシマザサが長さを増し、来週の草刈が思いやられると感じる。

山頂に着き、久々の浅草岳に乾杯する。
Fさんからいただいた高級ワインが、体液に吸収される気がする。
山頂を早々に引き上げ、直下のテラスでゆっくりすることにした。
Yさんから頂いたおつまみや、Kさんからのお菓子など頂き、心から寛いだ。
 ゆっくりとした後、イワショウブの咲き乱れるテラスを後にし、同じ道をピストンで楽しく談笑しながら帰った。
思いがけない浅草岳であったが、なぜか本当に楽しかった。

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